【連続ブログ小説】宝沼歌劇団 第9話│紲瀬ひなた、退団発表!

・この物語はAIにより作成したプロットを採用し、AIと協働して執筆しています。
・掲載されているイラストはAIにより作成されています。
 ※無断使用・転載は固くお断りいたします。

前回のストーリー


お茶会は明るい地獄!?

「花子ちゃん、この前話してた来月のお茶会、もし予定が無ければ一緒にどう?」

紲瀬ひなたの退団の噂に心がざわつく日々を過ごしていた、ある日の夜。

ヌマ友の楓から電話が入る。

楓の声はいつも通り穏やかで、でも、どこか弾んでいる。

「え、お茶会?」

「そう。ひなたさんの」

「私、会員じゃないけど行けるの?」

「会員じゃなくても参加できる枠があるのよ。いつもじゃないんだけど、今回、同行枠で一人大丈夫そうだから、もしよかったらと思って」

もちろん、断ってもいい前提の声だった。

「行きたい!…… けど、ちょっと怖いな」

「近すぎる?(笑)」

楓が茶化すように笑う。

「うん、緊張しすぎて怖い」

「大丈夫よ。じゃ、申し込みしておくね」

「ありがとう! 準備しておく」

「準備?」

「そう、準備」

「そんなのいらないから。会場に行って、席に座ってひなたさんを見つめる。以上よ。(笑)」

楓に大笑いされながら電話を切る。

そして、いよいよ明日がお茶会という日、花子は駅ビルの小さなカフェにいた。

花子の前にはヌマ友の由紀子、そこへ遅れてやってきた梨沙が、席に着くなりニヤリと笑って花子に話しかける。

「で、明日なんだっけ? 明るい地獄」

思わず3人に笑いがこぼれる。

表現が的を射過ぎていたが、ここは一応否定しておく場面だ。

「地獄って言うな」

笑って返す花子。

「え、でも確かに地獄かも。推しと目が合う可能性があるってのは、明るい地獄」

由紀子は目の前のケーキを一口食べて笑う。

「花子がお茶会に行くとはね」

「楓さんが誘ってくれたから、一度くらいはと思って」

「いい経験だね。でも、地獄から生還したあとは、意外と反動が来るから、翌日の予定は詰めすぎないほうがいいと思うよ」

花子は思わず笑って問い返した

「反動ってなに?」

「感動し過ぎて、現実に帰ってくるのにタイムラグがあるってことよ」

梨沙が言うと、由紀子がすかさず突っ込む。

「花子さ、もし目が合っても勝手に意味を盛らないでね」

「そこなのよ、そこね。それが自分でもいちばん怖い」

花子は痛いところを突かれ、笑うしかない。

「盛るよね、あなたは。でもさ、盛ったら太るよ」

「太るって何?」

「花子のせっぴ―への愛が、取り返しのつかないほど太りそう」

由紀子の雑な例えに、花子と梨沙が同時に吹き出した。

「とりあえず、無事に帰っておいでね」

「祈ってて」

花子は笑いながら頷いた。

とにかく無事に帰る。

帰って、また働いて、また観る。

その循環を壊さないことが大切。

ついにその日がやって来た

お茶会は、花子にとって間違いなく“明るい地獄”だった。

緊張しすぎてほぼ、ひなたが何を話していたのか覚えていない。

間近で見るひなたは、花子にはとにかく眩し過ぎて、直視できなかった。

シルビーに導かれ、あれだけ近くでせっぴ―を見て来たはずなのに、現実の花子は紲瀬ひなたのオーラに圧倒されて記憶喪失。

その明るい地獄からなんとか無事に生還できたのは、お茶会から1週間もたってからだった。

そんな花子に、次なる地獄への招待状が突きつけられたのは、それからしばらくした月曜日の夕刻。

「花子、公式見た?」

いつものように仕事を終えて帰宅し、ゆっくりコーヒーでも飲みながら宝沼スカイステージでも観ようかと、ソファに腰かけたときだった。

梨沙からのLINEに、花子は自分の体温が一気に下がっていくのを感じた。

もしかして……

花子は慌てて公式ホームページを開く。

まさしく地獄への招待状。

そこに明るさはない。

ーー青組トップスター 紲瀬ひなた、トップ娘役 水城すずが、〇月〇日『旅立ちのセレナーデ│Dreams in the Distance』の千秋楽をもちまして、退団することが決まりましたのでお知らせいたします。

その瞬間、花子の視界からすべての色が消えた。

全身から力が抜け落ちて、声が出ない。

呼吸は浅くなり、手が震えて画面をうまくスクロールできない花子。

でも、逃げ場はない。

決定事項。

噂が噂でなくなり、点々としていた火種は、確実に点火された。

花子の胸の奥で、何かが小さな音を立てている。

燃えないように、燃やさないように、必死で守ってきたものが、とうとう燃え始めた音だった。

燃え始めた炎の前で、体の震えだけが止まらない。

ヌマ友のグループLINEは鳴りやまぬまま、スマホが震え続けている。

「ひなたさん、まじで……」

「本当だったね」

「会見って、明日だよね」

「信じたくないよ~」

「すずちゃんも同時退団なんだ? 」

「だと思ってたわ」

「次のトップって誰になるんだろう? 」

次のトップーー。

最後の一文が、花子の胸を締め付ける。

いつかは終わる

その言葉はとても現実的だった。

けして避けられない。

でも、避けられないからこそ、いまは見たくない、考えたくない。

花子は、そっと画面を閉じ、通知をOFFにした。

誰かとこの悲しみを共有したいのに、花子はうまくその感情を受け止めらないまま、ソファーに沈み込み、ただ天井を仰いでいた。

退団発表。

翌日の記者会見。

会見の翌日には宝沼スカイステージでの放送。

現実は、順番通りに進んでいく。

「シルビー……」

シルビーの名を呼んでも、ル・ヨンクを開いてみても、やはり銀色の裂け目は開かなかった。

シルビーはこれまで、花子の「見たい」に応えてくれた。

でも、今の花子が求めているものは、現実の順番をひとつずつ受け取る力だ。

花子は、自分の気持ちを落ち着かせるために、ゆっくりとコーヒーを飲み干した。

コーヒーの香りは、現実の匂いがする。

花子が膝の上に置いたル・ヨンクの表紙に、そっと手を添えたとき、部屋の空気がほんの少しだけ冷えた気がした。

銀色の光の気配ではない。

けれど、花子にはわかった。

これは確かに、シルビーが来る前の気配だ。

膝の上でル・ヨンクが、微かに光を放つ。

花子はその光をじっと見つめながっら息を整えた。

「こんばんは」

シルビーの声だった。

相変わらず仕事ができそうな声だ。

花子は一度だけ目を閉じ、そして、ゆっくりと開くと、まっすぐにシルビーを見て、シルビーが話すよりも先に口を開いた。

「今日は、行かない」

「うん、今日は行かない方がいいね」

シルビーが、あっさり同意したことに、花子はすこし意外そうに瞬きをする。

「どうしてそう思うの? 」

「止める必要がないからさ。花子はいま一生懸命、現実の順番を受け取れようとしてる。今夜はそれで十分」

「じゃあ、ひとつだけ、教えて」

「なに? 」

「私がやらなきゃいけないことは何だと思う? 」

「ちゃんと息をして、寝る。それだけさ」

シルビーはニッコリ笑って花子を見た。

「契約……、まだ続く? 」

花子の問いに、シルビーは少しだけ間を置いて答えた。

「必要な間はね。でも、必要じゃなくなったら終わる。それが契約」

花子はその言葉を胸の奥へ沈めた。

「おやすみ」

シルビーはそれだけを言い残して、光の中へ消えていった。

そして花子の部屋には、いつもの冷蔵庫の音だけが響いている。

契約の終わりーー。

いつか、シルビーが「もう契約は要らない」と判断する日が来るのだろうか。

その日が、紲瀬ひなたの退団と重なるのか、重ならないのか。

今夜はまだ、分からないままでいい。

花子はそう思いながらル・ヨンクを棚に戻すと、いつもより早めにベッドに横になった。

電気を消した部屋の暗闇の中で、稽古場のあの床の線がよみがえる。

あの線の上を歩いていたひなたの背中が、すこしだけ遠くなる。

ぼんやりとした記憶。

寝付けないのは分かっている。

花子は、大きく息を吸って、そして吐いた。

ついに紲瀬ひなた、退団までのカウントダウンが始まるーー。


【宝沼歌劇団 第10話│次なる火種は次期論争!?】の更新予定は3/1です。

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