
・この物語はAIにより作成したプロットを採用し、AIと協働して執筆しています。
・掲載されているイラストはAIにより作成されています。
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前回のストーリー
お茶会は明るい地獄!?
「花子ちゃん、この前話してた来月のお茶会、もし予定が無ければ一緒にどう?」
紲瀬ひなたの退団の噂に心がざわつく日々を過ごしていた、ある日の夜。
ヌマ友の楓から電話が入る。
楓の声はいつも通り穏やかで、でも、どこか弾んでいる。
「え、お茶会?」
「そう。ひなたさんの」
「私、会員じゃないけど行けるの?」
「会員じゃなくても参加できる枠があるのよ。いつもじゃないんだけど、今回、同行枠で一人大丈夫そうだから、もしよかったらと思って」
もちろん、断ってもいい前提の声だった。
「行きたい!…… けど、ちょっと怖いな」
「近すぎる?(笑)」
楓が茶化すように笑う。
「うん、緊張しすぎて怖い」
「大丈夫よ。じゃ、申し込みしておくね」
「ありがとう! 準備しておく」
「準備?」
「そう、準備」
「そんなのいらないから。会場に行って、席に座ってひなたさんを見つめる。以上よ。(笑)」
楓に大笑いされながら電話を切る。
そして、いよいよ明日がお茶会という日、花子は駅ビルの小さなカフェにいた。
花子の前にはヌマ友の由紀子、そこへ遅れてやってきた梨沙が、席に着くなりニヤリと笑って花子に話しかける。
「で、明日なんだっけ? 明るい地獄」
思わず3人に笑いがこぼれる。
表現が的を射過ぎていたが、ここは一応否定しておく場面だ。
「地獄って言うな」
笑って返す花子。
「え、でも確かに地獄かも。推しと目が合う可能性があるってのは、明るい地獄」
由紀子は目の前のケーキを一口食べて笑う。
「花子がお茶会に行くとはね」
「楓さんが誘ってくれたから、一度くらいはと思って」
「いい経験だね。でも、地獄から生還したあとは、意外と反動が来るから、翌日の予定は詰めすぎないほうがいいと思うよ」
花子は思わず笑って問い返した
「反動ってなに?」
「感動し過ぎて、現実に帰ってくるのにタイムラグがあるってことよ」
梨沙が言うと、由紀子がすかさず突っ込む。
「花子さ、もし目が合っても勝手に意味を盛らないでね」
「そこなのよ、そこね。それが自分でもいちばん怖い」
花子は痛いところを突かれ、笑うしかない。
「盛るよね、あなたは。でもさ、盛ったら太るよ」
「太るって何?」
「花子のせっぴ―への愛が、取り返しのつかないほど太りそう」
由紀子の雑な例えに、花子と梨沙が同時に吹き出した。
「とりあえず、無事に帰っておいでね」
「祈ってて」
花子は笑いながら頷いた。
とにかく無事に帰る。
帰って、また働いて、また観る。
その循環を壊さないことが大切。
ついにその日がやって来た
お茶会は、花子にとって間違いなく“明るい地獄”だった。
緊張しすぎてほぼ、ひなたが何を話していたのか覚えていない。
間近で見るひなたは、花子にはとにかく眩し過ぎて、直視できなかった。
シルビーに導かれ、あれだけ近くでせっぴ―を見て来たはずなのに、現実の花子は紲瀬ひなたのオーラに圧倒されて記憶喪失。
その明るい地獄からなんとか無事に生還できたのは、お茶会から1週間もたってからだった。
そんな花子に、次なる地獄への招待状が突きつけられたのは、それからしばらくした月曜日の夕刻。
「花子、公式見た?」
いつものように仕事を終えて帰宅し、ゆっくりコーヒーでも飲みながら宝沼スカイステージでも観ようかと、ソファに腰かけたときだった。
梨沙からのLINEに、花子は自分の体温が一気に下がっていくのを感じた。
もしかして……
花子は慌てて公式ホームページを開く。
まさしく地獄への招待状。
そこに明るさはない。
ーー青組トップスター 紲瀬ひなた、トップ娘役 水城すずが、〇月〇日『旅立ちのセレナーデ│Dreams in the Distance』の千秋楽をもちまして、退団することが決まりましたのでお知らせいたします。
その瞬間、花子の視界からすべての色が消えた。
全身から力が抜け落ちて、声が出ない。
呼吸は浅くなり、手が震えて画面をうまくスクロールできない花子。
でも、逃げ場はない。
決定事項。
噂が噂でなくなり、点々としていた火種は、確実に点火された。
花子の胸の奥で、何かが小さな音を立てている。
燃えないように、燃やさないように、必死で守ってきたものが、とうとう燃え始めた音だった。
燃え始めた炎の前で、体の震えだけが止まらない。
ヌマ友のグループLINEは鳴りやまぬまま、スマホが震え続けている。
「ひなたさん、まじで……」
「本当だったね」
「会見って、明日だよね」
「信じたくないよ~」
「すずちゃんも同時退団なんだ? 」
「だと思ってたわ」
「次のトップって誰になるんだろう? 」
次のトップーー。
最後の一文が、花子の胸を締め付ける。
いつかは終わる
その言葉はとても現実的だった。
けして避けられない。
でも、避けられないからこそ、いまは見たくない、考えたくない。
花子は、そっと画面を閉じ、通知をOFFにした。
誰かとこの悲しみを共有したいのに、花子はうまくその感情を受け止めらないまま、ソファーに沈み込み、ただ天井を仰いでいた。
退団発表。
翌日の記者会見。
会見の翌日には宝沼スカイステージでの放送。
現実は、順番通りに進んでいく。
「シルビー……」
シルビーの名を呼んでも、ル・ヨンクを開いてみても、やはり銀色の裂け目は開かなかった。
シルビーはこれまで、花子の「見たい」に応えてくれた。
でも、今の花子が求めているものは、現実の順番をひとつずつ受け取る力だ。
花子は、自分の気持ちを落ち着かせるために、ゆっくりとコーヒーを飲み干した。
コーヒーの香りは、現実の匂いがする。
花子が膝の上に置いたル・ヨンクの表紙に、そっと手を添えたとき、部屋の空気がほんの少しだけ冷えた気がした。
銀色の光の気配ではない。
けれど、花子にはわかった。
これは確かに、シルビーが来る前の気配だ。
膝の上でル・ヨンクが、微かに光を放つ。
花子はその光をじっと見つめながっら息を整えた。
「こんばんは」
シルビーの声だった。
相変わらず仕事ができそうな声だ。
花子は一度だけ目を閉じ、そして、ゆっくりと開くと、まっすぐにシルビーを見て、シルビーが話すよりも先に口を開いた。
「今日は、行かない」
「うん、今日は行かない方がいいね」
シルビーが、あっさり同意したことに、花子はすこし意外そうに瞬きをする。
「どうしてそう思うの? 」
「止める必要がないからさ。花子はいま一生懸命、現実の順番を受け取れようとしてる。今夜はそれで十分」
「じゃあ、ひとつだけ、教えて」
「なに? 」
「私がやらなきゃいけないことは何だと思う? 」
「ちゃんと息をして、寝る。それだけさ」
シルビーはニッコリ笑って花子を見た。
「契約……、まだ続く? 」
花子の問いに、シルビーは少しだけ間を置いて答えた。
「必要な間はね。でも、必要じゃなくなったら終わる。それが契約」
花子はその言葉を胸の奥へ沈めた。
「おやすみ」
シルビーはそれだけを言い残して、光の中へ消えていった。
そして花子の部屋には、いつもの冷蔵庫の音だけが響いている。
契約の終わりーー。
いつか、シルビーが「もう契約は要らない」と判断する日が来るのだろうか。
その日が、紲瀬ひなたの退団と重なるのか、重ならないのか。
今夜はまだ、分からないままでいい。
花子はそう思いながらル・ヨンクを棚に戻すと、いつもより早めにベッドに横になった。
電気を消した部屋の暗闇の中で、稽古場のあの床の線がよみがえる。
あの線の上を歩いていたひなたの背中が、すこしだけ遠くなる。
ぼんやりとした記憶。
寝付けないのは分かっている。
花子は、大きく息を吸って、そして吐いた。
ついに紲瀬ひなた、退団までのカウントダウンが始まるーー。

【宝沼歌劇団 第10話│次なる火種は次期論争!?】の更新予定は3/1です。



