
2026年の宙組公演の演目が発表されましたが、、、
まさかの『黒蜥蜴』ですか。
2007年の花組さんは2回くらい観たかな~、でもまったく記憶にございませんっ!!(笑)
あの時代のおさちゃん(春野寿美礼)とあやねちゃん(桜乃彩音)、そしてゆうくん(真飛聖)のトライアングルの構図は印象が強いのですが、肝心な中身はま~ったく。
そういえばまだ下級生だっただいもん(望海風斗)もいましたね~。
花組公演はさっと見た感じ、手元にはないっぽいし、小説読んでるゆとりタイムもないし、手っ取り早いAIという文明の利器をフル活用して調べました!(笑)
と~っても気が早いのですが、作品についてご紹介しますね。
盛大なネタバレ案件でございます。
知りたくない方はどうぞご注意くださいませ。
なぜいま宙組で『黒蜥蜴』? ふたつの可能性
結論から言いますと、、、
① 春乃さくら、タイトルロールで退団
② 強すぎる2番手・水美舞斗がまさかの黒蜥蜴
演目発表を見たときに、この二つが一気に頭をかすめて行きました。
さーちゃん(春乃さくら)の退団は濃厚な気がしませんか?
ずんちゃん(桜木みなと)と添い遂げるようには思えないし、山吹ひばりちゃんがウォーミングアップ始めてるっぽいし。
『黒蜥蜴』ならトップ娘役の卒業公演としては申し分のない役です。
そして、もうひとつの可能性。
ま、こちらは私の勝手な妄想劇場かも知れませんけど(笑)、みなちゃん(水美舞斗)、とにかく存在感があり過ぎるわけですよ。
この前の千秋楽ライブ配信を見ていて、そればっかり感じてしまったくらいに。
なのでね、いっそのこと『黒蜥蜴』やっちゃってくださいよ、ってことで。(笑)
いや、でも、絶対みなちゃんの黒蜥蜴、似合うと思うわ。
ま、ないと思うけどね。
でも可能性はゼロじゃない … と思う。
でも仮にみなちゃんが「黒蜥蜴」やっちゃったら、さーちゃんの役がないんですよね、これがまた。
そう考えると、やっぱり、水美舞斗の黒蜥蜴は、、、ないか。(笑)
それはそうと、来年の112期生の初舞台は宙組公演なんですね。
来年から1公演後ろ倒し?
どうりで月組公演の演目発表時に「初舞台生」に触れてなかったわけだ。
なんで?と思っていたけど、これで納得。
全体的にお稽古期間が長くなったから、初舞台生もそりゃそうなるよね。。。
怪我のないよう、無理のないよう、ゆとりを持たせたお稽古期間は大事!
『黒蜥蜴』江戸川乱歩と三島由紀夫の違い
さて、ここから今日の本題です。
大正から昭和にかけて活躍した推理小説作家、江戸川乱歩が書いた長編推理小説『黒蜥蜴』。
それをのちに小説家であり劇作家でもあった三島由紀夫が戯曲として発表されました。
それ以外にも、これまでには大変多くの映画やテレビ、漫画、ラジオドラマ等が制作されてきました。
今回の宝塚宙組ヴァージョンは「江戸川乱歩が紡ぎ出し、三島由紀夫が戯曲へと昇華させた作品の世界観を軸にしながら」とあるものの、一方では「大胆な潤色」ともあり、生田先生マジックが楽しみですね。
江戸川乱歩の小説『黒蜥蜴』と、三島由紀夫がそれを舞台用に書き直した戯曲『黒蜥蜴』は、同じ物語をもとにしていますが、見えている世界がまるで違います。
乱歩が描いたのは犯罪の謎と心理の闇、三島が描いたのは人間の心がどこまで「美」と「愛」に溺れていけるかという幻想でした。
両者を比べると、同じ登場人物たちがまるで別の人生を歩んでいるかのごとく。
ふたつの『黒蜥蜴』世界観の違い
乱歩版では、黒蜥蜴は冷酷で頭の切れる女怪盗です。
目的は宝石と金、ただし彼女の残酷さと大胆さが、読者をぞっとさせる。
彼女の「人間標本の館」は美を求める芸術ではなく、狂気の象徴です。
生きたままの美しさを固定しようとする発想が不気味で、乱歩の得意とする“猟奇的な恐怖”の世界が広がっています。
物語は推理小説として組み立てられ、明智小五郎は理性と論理の化身。
事件を分析し、罠を見抜き、犯罪者を追い詰めることが目的です。
乱歩の描く世界では、明智は常に「光の側」の存在であり、黒蜥蜴は闇の住人。
二人の間に恋や共感の余地はほとんどなく、物語は知恵比べの勝負として決着します。
一方、三島由紀夫が描いた黒蜥蜴は、まったく違う存在です。
彼女は犯罪者である以前に、「美を愛しすぎた人」です。宝石を奪うのも、富を得たいからではなく、“永遠に輝くもの”にすがるため。
人間標本の館も、猟奇ではなく「永遠の美を閉じ込める聖域」として描かれます。
三島の黒蜥蜴は美に殉じる芸術家であり、恋に身を焦がす女性でもあります。
そして、その恋の相手が明智小五郎です。
三島版の明智は、ただの探偵ではありません。
黒蜥蜴の心を理解してしまう男です。
理性と倫理の側に立ちながらも、彼女の美の論理にどこかで惹かれてしまう。
そのため、最後に黒蜥蜴が毒で死ぬ場面では、勝ったはずの明智が悲しみに沈みます。
犯人を捕らえた満足ではなく、理解してしまった罪悪感が残るのです。
「どうやって」なのか、「なぜ」なのか
江戸川乱歩の小説版が「どうやって」の物語。
つまりどのように事件が起こり、どう解決されるかです。
それに対し三島由紀夫の戯曲版は、「なぜ」の物語。
なぜ人は美や愛のために破滅するのか、なのです。
乱歩は事件を外から観察し、三島は登場人物の心の中に潜り込みました。
舞台では場面が大きく削られ、ホテル・屋敷・アジトという限られた空間の中で、黒蜥蜴と明智の対話が中心に置かれます。
その対話は、まるで恋人たちの駆け引きのようでもあり、哲学的な問答のようでもあります。
「生きている美と、死によって閉じ込められる美、どちらが本物か」
— その問いこそが、三島が黒蜥蜴に託した主題と言えるのかも知れません。
ふたつの意味を持つそれぞれの結末
最後の違いは、結末の意味です。
乱歩にとって黒蜥蜴の死は「敗北」でした。
法と理性が勝ち、犯罪が終わるという清算。
しかし三島にとってはそれが「完成」でした。
黒蜥蜴は愛と美を同時に手に入れ、明智の腕の中で静かに息を引き取る。
死が彼女の望んだ永遠であり、恋の成就なのです。
観客は、恐怖よりも哀しさと陶酔を感じながら幕を見送ります。
つまり、乱歩の『黒蜥蜴』は「犯罪の物語」であり、三島の『黒蜥蜴』は「美と愛の物語」です。
同じ事件を描いても、ひとりの作家は「現実の闇」を照らし、もうひとりの作家は「心の闇の中の光」を探したわけです。
なんとも不思議なふたつの『黒蜥蜴』の世界観。
『黒蜥蜴』のざっくり早わかり「あらすじ」
物語の時代は昭和初期、舞台は東京の上流社会。
華やかな社交界の裏で、宝石を狙う怪盗「黒蜥蜴(くろとかげ)」と、名探偵「明智小五郎」の頭脳戦が繰り広げられます。
一見「怪盗vs探偵」の対決ですが、実はこれは「美と知、愛と死」の物語です。
黒蜥蜴はただの犯罪者ではなく、美に憑かれたロマンチスト。
明智はただの探偵ではなく、彼女の心を理解してしまう知的な鏡のような存在です。
予告された犯罪
日本でも有数の宝石商・岩瀬庄兵衛のもとに、一通の脅迫状が届きます。
「あなたの秘蔵のダイヤ《エジプトの星》と、愛娘・早苗をいただきにまいります。」
差出人は“黒蜥蜴”―世界的に名の知れた女怪盗。
驚いた岩瀬は、名探偵明智小五郎に護衛を依頼します。
早苗の身を守るため、岩瀬はホテルに宿泊し、厳重な警備を敷きます。
しかしそこに、上品な夫人・緑川夫人が現れます。
彼女こそ正体を隠した黒蜥蜴でした。
優雅な振る舞いで周囲を油断させ、ついに早苗を誘拐してしまいます。
けれども明智はすぐにその手口を見抜き、娘を救出します。
一度は失敗した黒蜥蜴。しかし、彼女の狙いは終わっていませんでした。
黒蜥蜴の逆襲
黒蜥蜴は再び動き出します。
彼女は岩瀬に連絡を取り、「娘とダイヤの交換」を要求します。
苦渋の末に岩瀬は《エジプトの星》を渡しますが、早苗は戻りません。
黒蜥蜴の狙いは、宝石だけではありません。
彼女は「美しいものを永遠に残したい」という欲望を抱き、美しい青年や女性を「人間標本」として保存する秘密の館を持っていたのです。
早苗もまた、黒蜥蜴が「コレクション」に加えようとしていた一人でした。
愛と死の結末
黒蜥蜴のアジトは、港近くの倉庫にあります。
そこは「人間の美術館」。
生前の姿のままに保存された男女の人形が並ぶ、恐ろしくも幻想的な空間です。
黒蜥蜴は明智をも騙そうとしますが、実は明智はすでに部下に変装してアジトへ潜入していました。
追い詰められた黒蜥蜴は、もはや逃げ場がないことを悟ります。
しかし彼女は最後まで誇り高く、そして美しく生きようとします。
明智への愛を告げたあと、指輪に仕込んだ毒を口に含み、静かに息を引き取ります。
明智はその亡骸を抱きしめ、「彼女の心を理解してしまった」自分に、名探偵としてではなく一人の人間として苦悩します。
黒蜥蜴の死は、敗北ではなく“永遠の美”として描かれ、物語は静かな余韻を残して幕を閉じます。
主な登場人物
『黒蜥蜴』には、メインキャラクターこそ少数ですが、舞台上では多くの人物が登場します。
登場人物は、どの人物も「明智と黒蜥蜴の対立(知と美)」を中心に配置されていて、黒蜥蜴側の人物は「美と破滅」を、明智側の人物は「理性と秩序」を象徴しています。
最終的に、この物語で真に「人間的」なのは、法の外で生き、愛のために死ぬ黒蜥蜴なのかもしれません。
明智は生き残りますが、彼の心には「理解してしまった罪」が残る―そこが三島由紀夫版『黒蜥蜴』の最大の魅力です。
ここでは、三島由紀夫による戯曲版(舞台脚本)を基にして、重要度の高い順にできるだけ多くの登場人物を紹介します。
黒蜥蜴 / 緑川夫人
タイトルロールで物語の中心人物、妖艶な女怪盗。
表向きは社交界の華・緑川夫人として振る舞うが、裏では世界中の宝石を狙う大泥棒。
“美しいものを永遠にしたい”という欲望に取りつかれており、人間の美しさすらも保存しようと「人間標本の館」を作っている。
冷酷さと詩的な感受性を併せ持ち、宝石よりも“美そのもの”を愛する。
明智小五郎に恋をし、彼だけは自分を理解してくれると信じるが、最後はその愛ゆえに滅びる。
明智小五郎
宝塚版では、この役がトップスター演じる「主役」として描かれます。
名探偵。
知性・洞察力・冷静さを武器に黒蜥蜴に挑む。
だが、単なる正義の味方ではなく、黒蜥蜴の思想や美意識を理解できる「知の共犯者」として描かれる。
彼女を逮捕することが任務でありながら、どこかで彼女に惹かれ、最後には深い哀しみを抱く。
戯曲では黒蜥蜴と明智の間に、緊張と誘惑が入り混じる濃密な空気が流れる。
岩瀬庄兵衛
日本屈指の宝石商。
ダイヤ《エジプトの星》の所有者で、黒蜥蜴に狙われる。
財産と名誉を誇りにしているが、娘・早苗を失う恐怖にかられ、明智に警護を依頼する。
金銭欲と父性愛の間で揺れる“庶民的な人間臭さ”がある。
黒蜥蜴の計略に振り回される典型的な「依頼人」タイプ。
岩瀬早苗
岩瀬の一人娘。
純粋で気品のある若い女性。
黒蜥蜴に“永遠の美の象徴”として狙われ、誘拐される。
彼女の清楚な存在は黒蜥蜴の“死の美学”と対照的。
黒蜥蜴が「生きた美」と「死の静止美」のどちらを選ぶかを問う存在でもある。
雨宮潤一
花組版では2番手さんの役がこの雨宮くんでした。
黒蜥蜴の腹心の部下。端正な青年。
かつて黒蜥蜴に拾われ、忠誠を誓っている。
黒蜥蜴を崇拝し、時には恋慕に近い感情を抱く。
しかし黒蜥蜴が明智に心を奪われていくのを見て嫉妬し、命令と感情の間で揺れ動く。
三島版では、黒蜥蜴の“支配と愛のはざま”を象徴する存在。
中村警部
警視庁の刑事。
明智と連携して黒蜥蜴を追う。
やや鈍重で現実的。舞台では観客に状況を説明する“語り役”のような存在。
明智の論理を補完し、黒蜥蜴の幻想世界との対比を作る。
的場刑事
当時の男役序列でいくと、目立つ役どころとしてはみつるくん(華形ひかる)の役かな?
中村警部の部下。
行動派で、アジト急襲などの実働を担当。
緊張を和らげるような庶民的な台詞もあり、舞台では“現実世界の感覚”を保つ。
小林少年
明智探偵の助手。
少年探偵団のリーダー格。
若く機敏で、変装や潜入に長けている。
黒蜥蜴のアジトにも潜り込み、情報を明智へ伝える。
三島版では台詞は少ないが「純粋な行動力」の象徴。
少年役なので、花組版では小柄な実力派娘役だった桜一花ちゃんが演じていましたね。
田村刑事
アジト潜入の際に登場。
冷静な補佐役で、明智の指示に従って動く。
黒蜥蜴側の世界とは一線を画す“理性の象徴”でもある。
岩瀬家の女中
屋敷の内情を知る人物ですが、戯曲では名前は特定されていない。
黒蜥蜴側の手先として潜り込んでいるスパイであることが、途中で明らかになる。
屋敷内の情報を漏らし、誘拐計画の成功に関与。
典型的な“内部の裏切り者”としてサスペンス要素を強める。
片腕の男
黒蜥蜴の右腕。
この役も名前は特定されていない。
過去の犯罪で片腕を失っており、彼女に命を捧げている。
外見は粗野だが、黒蜥蜴への忠誠は絶対。
雨宮潤一とは、しばしば対立する。
人間標本の搬出やトランク輸送などの「裏の実働部隊」を率いる。
青木(黒蜥蜴の手下)
岩瀬家の屋敷に潜入しているスパイのひとり。
電話や荷物の受け渡しを通して情報を伝える。
舞台では登場時間は短いが、事件を動かすトリガー役。
若い女(黒蜥蜴の部下)
黒蜥蜴の変装を補助する女性部下。
ドレスの準備や化粧、細工など、彼女の“変身術”を支える。
黒蜥蜴の「美」へのこだわりを日常的に支える存在。
執事・老使用人(黒蜥蜴の屋敷に仕える)
人間標本館の管理人のような役割。
黒蜥蜴に従順で、外部からの侵入を警戒する。
舞台では、不気味な沈黙の演出に使われることが多い。
港の船員(黒蜥蜴の運搬ルートの協力者)
宝石や誘拐した人間を運ぶためのルートを確保する人物。
直接的なセリフは少ないが、舞台では「黒蜥蜴の犯罪ネットワーク」を示すために登場。
岩瀬家の運転手
黒蜥蜴側に買収されている人物。
送迎車を利用して早苗を移送する計画に関与。
彼の裏切りによって、誘拐が一気に現実化する。
ホテルの支配人
物語冒頭、岩瀬と明智が警備を行うホテルの責任者。
黒蜥蜴が「緑川夫人」として現れる場面に関わる。
上流社会の礼儀を守ろうとしつつも、混乱に巻き込まれる。
給仕・ベルボーイ
ホテルでの小道具的存在で扱われている。
黒蜥蜴が部屋に侵入する際の“人の目”を担い、緊張感を高める。
警察隊長(アジト急襲時に登場)
最終場面で倉庫を包囲する警察隊の指揮官。
明智の号令で突入するが、黒蜥蜴の死に間に合わない。
法の象徴として、悲劇に冷たい現実の影を落とす。
人間標本たち(セリフはないが象徴的存在)
黒蜥蜴の「美のコレクション」たち。
美しい青年・女性の剥製のような人形。
彼女の狂気と美学の結晶であり、物語の象徴。
彼らの存在によって、この物語は単なる犯罪劇ではなく“幻想劇”になる。
宙組ヴァージョンの配役はいかに
- 明智小五郎:桜木みなと
- 黒蜥蜴:春乃さくら
- 雨宮潤一:水美舞斗
- 岩瀬早苗:山吹ひばり
- 警部:鷹翔千空
- 岩瀬庄兵衛:松風輝
この辺りまではなんとなく間違いなさそうですが、その他の配役は生田先生の脚本次第なところもあるから、予想が難しいですね。
花組ヴァージョンの配役は、若手の新進男役だった望海風斗、朝夏まなと、真野すがた、中堅で別格の未涼亜希、愛音羽麗らがみ~んな書生。
警部には壮一帆、刑事には高翔みず希、華形ひかるという布陣でした。
儲け役の「早苗」は当時のスーパー新人娘役だった野々すみ花が演じています。
「人間標本の館」に美の象徴として飾るために誘拐される若い美しい女性ということで、いまの宙組ならひばりちゃんしか浮かばない。
じゅっちゃん(天彩峰里)ではないと思います。
でも、そうなるとじゅっちゃんは誰を演じるんだろう??
この作品って、表立ったメインキャストってホント少ないですよね。
娘役は特に
それを生田先生のマジックでどうにかするんでしょうけれど、、、
男役スターとて大渋滞中の宙組さんなので、役が過不足なく行き渡るのか、ちょっと心配だな。
でも、楽しみではあります。
まとめ
最速「黒蜥蜴」特集をお届けしましたが、ちょっと気が早すぎたかな。(笑)
すぐに調べたくなる「探求癖」。
続々と発表される次回作、、、
予習しなくちゃならない公演が続くので、ちょっと、焦り気味。
でも、これからまだしばらくは、ブランメルの沼に嵌ろうと思います!








