
ようやく重い腰を上げて、月組公演『RYOFU』の予習を始めたところ、簡単には終われませんでした。(笑)
なので、今回も引き続き『RYOFU』の予習を皆さまと楽しみたいと思います!
三国志演義ってどんな物語なの?
前回、「古典・三国志演義」というものが、歴史上の事実をベースにしつつ、ドラマチックに肉付けされた小説であることはわかりましたが、肝心なストーリーがわからなければ意味がない。
私のように「三国志?さっぱりわからんっ!」というファンの方のために、月組公演の脚本の土台となる物語を紹介しますね。
これを知ったとて、歴史に詳しくないと「???」がいっぱいです。(笑)
とはいえ、少しでも触れておくと、舞台初見での「?????」が「???」くらいにはなるかも知れない。(笑)
少々長いですが、お付き合いください。
はじめに
『三国志演義』は、中国の後漢王朝が弱り、各地の有力者(群雄)が争って「魏・蜀・呉」という三つの国が並び立つまでを、英雄たちのドラマとして描いた長編の歴史小説です。
物語の範囲は黄巾の乱(184年)から晋による統一(280年)までを大きくカバーしています。
史実の骨格を使いながら、人物の性格や歴史上の出来事をドラマチックに脚色し、「読み物」としての面白さを最大化しているのがこの作品特徴です。
物語の始まり
物語はまず、民衆の反乱「黄巾の乱」で国が大混乱に陥るところから始まります。
各地で反乱鎮圧にあたった武将たちが頭角を現し、都では宦官や外戚の争いが激化します。
そこへ董卓(とうたく)という軍人が大軍を率いて都に入り、皇帝を思いのままに操る“独裁”に近い支配を始めます。
人々は董卓を倒そうと連合軍を組みますが、利害が一致せず、連合はうまくまとまりません。
ここで重要なのは、国を助ける正義の連合が一気に勝つのではなく、「正しいはずの側でも足並みが揃わない」という現実が描かれる点です。
呂布の大きな存在感
董卓の周辺では、猛将・呂布(りょふ)が大きな存在感を放ちます。
呂布は武力では無敵に近い一方、野心や人間関係の歪みが悲劇を呼びます。
演義では貂蝉(ちょうせん)という絶世の美女が登場し、董卓と呂布の間に疑いと嫉妬を生み、やがて呂布は董卓を討つことになります。
このあたりは史実の“政変”を、愛憎劇として燃え上がらせる演義の代表的な見せ場と言えるでしょう。
このヒロイン「貂蝉」については、フィクション色が強い存在として知られています。
三つの勢力に分断
やがて、国を支える中心勢力が三つに分かれていきます。
北方で力を伸ばすのが曹操(そうそう)。
曹操は優れた政治家・軍略家として、皇帝を保護する形で“中央政府の権威”を握り、戦と統治を両立させて勢力を拡大します。
一方、「漢王朝を立て直す」という大義を掲げて戦うのが劉備(りゅうび)です。
劉備は出自が強いわけではありませんが、人の心をつかむ力があり、関羽(かんう)・張飛(ちょうひ)といった豪傑や、多くの仲間に支えられて勢力を固めます。
劉備陣営の知恵袋として登場するのが諸葛亮(しょかつりょう)。
天才軍師として数々の策を繰り出し、弱小からの逆転を演出する“物語の推進力”になります。
もう一つの勢力が江南を基盤とする孫権(そんけん)の呉です。
呉は水軍や地の利を活かして防衛力を高め、魏と蜀の両方と駆け引きを重ねながら生き残りを図ります。
ここで物語の最大級の山場が「赤壁の戦い」です。
曹操の大軍が南下し、呉は滅亡寸前に追い詰められますが、呉の周瑜(しゅうゆ)らが知略と火計で大軍を打ち破ります。
蜀の諸葛亮もこの戦いに絡み、呉と蜀が一時的に手を組むことで、天下が「魏・蜀・呉」の三つに割れる流れが決定的になります。
領土と人材をめぐる三国の争い
その後は、三国それぞれが領土と人材を巡って争い続けます。
蜀は劉備が蜀(四川方面)を得て国を立てますが、関羽の死や、呉との衝突などで大きな痛手を負います。
劉備の死後、諸葛亮は蜀を支え、北方の魏へ何度も遠征(北伐)します。
演義では諸葛亮の策略や誠実さが強く描かれ、蜀の“正義”を象徴する存在になります。
一方の魏は、曹操の死後、曹丕(そうひ)が皇帝となり国を整えますが、次第に司馬懿(しばい)一族が実権を強め、魏の内部から権力構造が変化していきます。
呉もまた内政・外政の難しさに直面し、決定打を欠いたまま長期戦に入ります。
物語の結末は「司馬氏」による天下統一
最終的には、魏の実権を握った司馬氏が魏を乗っ取り晋を建て、晋が蜀を滅ぼし、最後に呉も滅ぼして天下を統一します。
つまり、物語の結末は「三国のどこかが理想を実現して勝つ」ではなく、「戦いが長引くうちに別の家(司馬氏)が台頭し、統一に至る」という、少し苦い終わり方です。
演義はその中で、忠義・義理・裏切り・野心・友情・家族といったテーマを強烈に際立たせ、歴史を“人間ドラマ”として読ませます。
作者や成立についても、元末明初に羅貫中に帰される形で語られ、史書『三国志』(陳寿)などを土台に物語化した作品として位置づけられています。
重要な登場人物を「物語に忠実に」選ぶと
今回の宝塚作品では、呂布(RYOFU)が主役として描かれるため、この小説の「重要な登場人物」と舞台の主要キャストは異なることが予想されますが、ここでは、小説に基づいた「重要な登場人物」を上げてみようと思います。
主な登場人物(重要度が高い順・約10名+補足)
劉備(りゅうび)
「漢を復興する」という大義の旗印。
演義では仁徳の人として描かれ、仲間を得て逆境から国を築く“主人公格”です。
曹操(そうそう)
最大の実力者。
政治・軍事・人材登用に優れ、現実主義で勝ち続けます。
演義では敵役の色が濃くなりやすく、劉備との対比で物語が引き締まります。
諸葛亮(しょかつりょう)
蜀の軍師。
演義では天才策士として、奇策・心理戦・外交で局面を動かします。
忠義と知略の象徴で、“名場面製造機”です。
関羽(かんう)
劉備の義兄弟の一人。
武勇と義の象徴として神格化されるほどの存在感。
演義では「義を守るためにこそ戦う」人物像が強いです。
張飛(ちょうひ)
劉備の義兄弟の一人。
豪胆で直情的、突破力のある武将として描かれ、関羽と対をなす“武の柱”です。
孫権(そんけん)
呉の君主。
若くして国を背負い、周瑜や魯粛などの人材を活かして魏と蜀の間で生き残りを図ります。
赤壁以後の“もう一つの主役陣営”です。
周瑜(しゅうゆ)
呉の名将。
赤壁の勝利を支える中心人物。
演義では諸葛亮とのライバル関係が強く演出され、ドラマ性が増します。
司馬懿(しばい)
魏の重臣。
演義では諸葛亮の好敵手として描かれ、長期戦・政略で最後に勝つ側の象徴になります。
呂布(りょふ)
最強級の武将として名高い存在。
戦場では無類の強さを見せる一方、人間関係と野心が破滅を呼び、ピカレスクにも悲劇にもなる人物です。(今回の宝塚『RYOFU』の核)
董卓(とうたく)
都を掌握し暴政を敷く権力者。
物語前半の“悪の大黒柱”で、彼の登場が群雄割拠の引き金になります。
【補足】
貂蝉(ちょうせん)
演義で呂布と董卓の間に入り、離間と愛憎の引き金となる美女。史実というより物語的存在として理解すると観劇するときに分かりやすいかも知れません。
「三国志演義」は史実と何が違う?
三国志演義は史実に基づいてはいるものの、「創作」部分も多く描かれているようなので、個人的な興味で「史実との違い」がどの辺りなのかを調べてみました。
史実よりもドラマ性が強く脚色されている
「歴史書」ではなく「歴史小説」なので、事件や人物像が“ドラマ向け”に再構成されています。
演義は史書『三国志』などをベースにはしていますが、あくまでも「読み物として面白くする」ために、歴史上の出来事の順序をわかりやすく整理し、各陣営や人物たちの因果関係をわかりやすくし、人物の性格づけを強めています。
たとえば、同じ戦いでも「誰の機転で勝ったのか」「誰の一言が運命を変えたのか」などが、鮮明に描かれ、物語のカタルシス、つまり読者が物語を読み進める中で感じる緊張やモヤモヤを、最後に一気にほどいてスカッとする感覚や解放感を味わうことができる、ということが優先されています。
蜀(劉備側)中心の“正義の物語”になりやすい
演義は劉備・関羽・張飛・諸葛亮を中心に、忠義や仁徳を大きな価値として据えます。
その結果、蜀が感情移入しやすい側として描かれ、魏(曹操側)が冷酷・狡猾に寄りやすいなど、善悪のコントラストが強まります。
ちなみに、史実の評価はもっと複雑で、曹操の政治・軍事面での功績も大きいとされています。
貂蝉や桃園の誓いなど、象徴的なエピソードは「盛られている」
演義の有名場面には、史実で裏づけが弱い(または後世に作られた)ものが含まれています。
代表例としてよく言われているのが「貂蝉」で、演義では董卓暗殺の引き金となる恋愛・離間劇の中心として描かれていますが、史実として確実な扱いは難しく「物語的な存在」として理解したほうが良さそうです。
「桃園の誓い」は、劉備・関羽・張飛の絆を一瞬で伝えるための象徴的なエピソードとして非常に有名ではありますが、これについても演義特有の脚色がされている代表的な場面であると言われています。
策略・能力の誇張による軍師・武将の超人化
諸葛亮の策や、周瑜との駆け引きなどは、史実の上に逸話や後世の脚色が重なりやすい領域です。
演義では「一手で局面がひっくり返る」見せ場が連続し、軍師がほとんど魔法使いのように見えることもあります。
これは戦争の複雑さを「物語として理解できる形」にする効果があると同時に、武将たちの超人的な能力は、読者を物語に惹き込むスパイスにもなり得ます。
時間や人物関係の整理・短縮
当たり前ながら、史実は長期にわたり同時並行の戦線や内政要因が絡んでいます。
演義では、その長期的な流れを読者に短時間で追える形にするため、武将たちの登場のタイミング、人物同士の因縁、事件の連鎖を整理して提示します。
結果として「史実よりも因果が明快」「人物関係が濃い」構造になり、舞台化・映像化にも向く形になるのでしょう。
さらに、次回に続く
なんかちょっとワクワクしてきたかも。
ここまできたら、宝塚版『RYOFU』の主人公である呂布を中心に、どんな物語が展開されるのかを探りたくなるのが私の性格。
まだ予習は終われない。(笑)
次回の記事では、呂布を中心にもう少し予習を続けてみようと思います。



