
- 史実の物語を見るときの楽しみ
- 実在する登場人物と解説
- ボー・ブランメル(Beau Brummell, 1778–1840)
- プリンス・オブ・ウェールズ(George, Prince of Wales, 1762–1830)
- チャールズ・ジェームズ・フォックス(Charles James Fox, 1749–1806)
- ヤーマス卿(Francis Seymour-Conway, Lord Yarmouth, 1777–1842)
- ジョン・スコット(John Scott, 1st Earl of Eldon, 1751–1838)
- アントナン・カレーム(Marie-Antoine Carême, 1784–1833)
- ウィリアム・ブランメル(William Brummell, 1773–1831)
- リチャード・ブリンズリー・シェリダン(Richard Brinsley Sheridan, 1751–1816)
- ヘンリー・ピアポント(Henry Pierrepont, 1780–1851)
- ジョン・ナッシュ(John Nash, 1752–1835)
- ジョン・ウィルソン・クローカー(John Wilson Croker, 1780–1857)
- トーマス・ローレンス(Sir Thomas Lawrence, 1769–1830)
- ニコラス・ヴァンシタート(Nicholas Vansittart, 1766–1851)
- アルヴァンレー卿(William Arden, 2nd Baron Alvanley, 1789–1849)
- キャロライン皇太子妃(Caroline of Brunswick, 1768–1821)
- ロバート・ジェンキンソン(Robert Jenkinson, 2nd Earl of Liverpool, 1770–1828)
- ヘンリー・アディントン(Henry Addington, 1757–1844)
- アーサー・ウェルズリー(Arthur Wellesley, 1769–1852)
- ヒロインは創作の人物
- まとめ
史実の物語を見るときの楽しみ
雪組の大劇場公演『ボー・ブランメル~美しすぎた男~』の配役が発表されました。
いろいろ興味深い登場人物がいますね。
明らかに生田先生が生み出したと思われる創作の人物と、歴史上に実在したであろう人物。
「ロココの夢」さんたちは、星組のディミトリ―でいえば「リラの精」みたいな感じですかね?
ここに新公ヒロイン経験者とか律希奏くんとかが配されているところをみると、星組でリラの精の中心として贅沢に使われた3人娘(小桜ほのか、瑠璃花夏、詩ちづる)のように、律希くんあたりを中心にした構成になるのかな。
そして、遊び心を感じたのは「ヤー」のつく人々。
- メイヤー
- アイヤー
- カイヤー
- サイヤー
- タイヤー
- ナイヤー
- ハイヤー
最初はなんだこれ?って思いましたが(笑)、きっと物語の中で何かを象徴する存在として登場するのでしょうね。
でもってなによりも気になるのは、実在した人物が誰で、ブランメルとどんな関りのある人かということ。
さっそく調べてみました!
実在する登場人物と解説
おもいのほか実在している人物が多くて、生田先生の脚本と史実との比較がとても楽しみになりました。
配役表に登場しているメンバーで歴史上に実在する人物と、その人がどんな立場だったのかを調べてみたので、簡単にご紹介します。
ボー・ブランメル(Beau Brummell, 1778–1840)
朝美絢
本名ジョージ・ブライアン・ブランメル。
イギリスの洒落者(ダンディズム)の象徴的存在。
プリンス・オブ・ウェールズ(のちのジョージ4世)と交友を結び、洗練された装い・礼儀作法でロンドン社交界の寵児となりますが、のちに浪費と借金で没落し、フランス・カーンで孤独に生涯を閉じます。
プリンス・オブ・ウェールズ(George, Prince of Wales, 1762–1830)
瀬央ゆりあ
のちのイギリス王 ジョージ4世。
贅沢と享楽で知られますが、芸術・建築・ファッションを熱心に援助する存在でもありました。
ブランメルの親友として社交界で行動を共にし、のちに対立して決裂します。
ブランメルの名声を支えた重要な人物です。
チャールズ・ジェームズ・フォックス(Charles James Fox, 1749–1806)
奏乃はると
ホイッグ党の大政治家で、演説の名手。
アメリカ独立戦争に反対し、フランス革命を一定程度擁護するなど革新的な立場をとった人物です。
豪放磊落な性格で、王太子(プリンス・オブ・ウェールズ)とも親しくしていました。
ヤーマス卿(Francis Seymour-Conway, Lord Yarmouth, 1777–1842)
透真かずき
のちの第3代ハートフォード侯爵。
王太子派の社交界で活動し、ブランメルとも関わりがありました。
外交官・政治家としても活躍しています。
ジョン・スコット(John Scott, 1st Earl of Eldon, 1751–1838)
真那春人
トーリー党の政治家であり法律家。
法務長官、大法官(Lord Chancellor)を務めた人物です。
強硬な保守派で、フランス革命や急進的改革に反対していました。
アントナン・カレーム(Marie-Antoine Carême, 1784–1833)
桜路薫
フランスの伝説的料理人。
「シェフの帝王、帝王のシェフ」と呼ばれ、近代フランス料理の基礎を築いた人物です。
ヨーロッパ各国の王侯貴族に仕え、ブランメルの時代にも社交界でその名声を轟かせました。
ウィリアム・ブランメル(William Brummell, 1773–1831)
諏訪さき
ジョージの兄で、外交官を務めた人物です。
イギリス公使館の書記官としてヨーロッパ各地に赴任し、安定したキャリアを築きました。
弟ジョージが浪費と社交で破滅していくのとは対照的に、堅実な人生を送っています。
破滅へ向かう弟に対し、外交官としての立場から直接的に援助することは難しかったようですが、手紙を通じて弟の消息を気にかけていたといいます。
リチャード・ブリンズリー・シェリダン(Richard Brinsley Sheridan, 1751–1816)
眞ノ宮るい
劇作家であり政治家。
喜劇『スクール・フォー・スキャンダル』で知られ、後年はホイッグ党の議員として活動していました。
王太子の親しい友人で、しばしば社交界のパーティを盛り上げていました。
ヘンリー・ピアポント(Henry Pierrepont, 1780–1851)
縣千
名門ピアポント家の一員で、のちに第4代キングストン侯爵に繋がる系譜にあたる人物です。
イギリスの政治家・貴族として活動していた彼は、19世紀初頭に政界で一定の地位を築き、トーリー党・ホイッグ党の有力者と交流がありました。
史料の中でブランメルと直接の深い関わりがはっきり残っているわけではありませんが、「リージェンシー期の社交界を代表する名門子息の一人」として登場すると思われます。
ジョン・ナッシュ(John Nash, 1752–1835)
麻斗海伶
イギリスの建築家。
リージェンシー様式を代表する人物で、ロンドンのリージェント・ストリート、リージェント・パークなどを設計した人物です。
プリンス・オブ・ウェールズ(後のジョージ4世)の後援を受けて活動していました。
ジョン・ウィルソン・クローカー(John Wilson Croker, 1780–1857)
咲城けい
アイルランド出身のトーリー党政治家であり作家。
海軍本部の事務次官を長く務め、保守的論客として知られる人物です。
ウィットの利いた批評家でもありました。
トーマス・ローレンス(Sir Thomas Lawrence, 1769–1830)
稀羽りんと
役名は「ロレンス」とだけ書かれていますが、おそらくは画家のトーマス・ローレンスのことを指していると思われます。
10代でプロの肖像画家として頭角を現し、20代でイギリス社交界を代表する肖像画家に成長。
ナポレオン戦争期のヨーロッパの要人たちを次々に描き、国際的な名声を得た「イギリス肖像画界」の第一人者です。
ニコラス・ヴァンシタート(Nicholas Vansittart, 1766–1851)
壮海はるま
イギリスの政治家。
トーリー党に属し、財務大臣(Chancellor of the Exchequer, 1812–1823)を務めました。
堅実な財政運営で知られ、のちにハーモンドスワース男爵となります。
アルヴァンレー卿(William Arden, 2nd Baron Alvanley, 1789–1849)
蒼波黎也
ブランメルの親友の一人で、最後まで彼を支えた人物です。
社交界のウィットに富んだ洒落者としても有名。
ブランメルが没落したのちも援助を惜しまなかったと言われています。
キャロライン皇太子妃(Caroline of Brunswick, 1768–1821)
音彩唯
プリンス・オブ・ウェールズの妻。
結婚生活は不幸で、夫婦仲は極めて悪かったといいます。
プリンス・オブ・ウェールズ(ジョージ4世)の即位に伴い王妃となりますが、その戴冠式への出席を拒まれるなど波乱の生涯を送りました。
ロバート・ジェンキンソン(Robert Jenkinson, 2nd Earl of Liverpool, 1770–1828)
華世京
トーリー党の政治家。
1812年から1827年まで首相を務め、ナポレオン戦争後の復興と内政安定に尽力しました。
保守的ではあるものの、現実的な政策で知られています。
ヘンリー・アディントン(Henry Addington, 1757–1844)
風立にき
トーリー党の政治家。
1801~1804年に首相を務めました。
のちに内務大臣や上院議員としても活動し、ナポレオン戦争期の和平交渉でよく知られる人物です。
アーサー・ウェルズリー(Arthur Wellesley, 1769–1852)
苑利香輝
のちの初代ウェリントン公爵。
ワーテルローの戦いでナポレオンを破り、ヨーロッパ史に名を残した名将です。
のちにイギリス首相も務めています。
ヒロインは創作の人物
夢白あやちゃんが演じるヒロイン「ハリエット・ロビンソン」という女性は、架空の人物だと思われます。
生田先生が歴史上に登場する誰かをモデルにしている可能性はありますが、ボー・ブランメルの人生を辿ってみても、ほぼ「女性関係」のはなしが出てきません。
これだけの「ダンディ」であれば、さぞや社交界でチヤホヤされたであろう存在なのに、、、恋愛面に関しては意外なほど記録が少ない人物。
ブランメルと噂になった女性たち
それでも一応は「うわさ」になったとされる女性は存在するようです。
その一人がプリンス・オブ・ウェールズの妻キャロライン皇太子妃で、社交界ではブランメルと彼女が親しく会話する姿が見られ、王太子の嫉妬を招いたという説があります。
ただし、ブランメルとキャロラインが恋愛関係だった証拠はなく、むしろ「親密に見せることで王太子をからかった」とも言われているようです。
そしてブランメルをとりまく貴族の女性たち。
洗練された服装、礼儀、会話術によって「理想の紳士」と言われていたブランメルですから、当然ながら貴族女性たちの人気の的ではありましたが、愛人関係を持ったという記録は見当たりません。
ブランメルの晩年の女性関係
ブランメルは生涯独身でした。
その理由は本人のみぞ知るではありますが、一説によるとプリンス・オブ・ウェールズや、その他友人たちの「愛人関係」を観察し、自らはスキャンダルに巻き込まれることを避けたとも言われています。
イギリス社交界で華やかな暮らしをしていた時代には、(実際に恋愛関係にあったという記録はないものの)何人かの女生とのウワサはありましたが、没落してフランスへ亡命して以降は、女性関係の記録は一切残っていないようです。
つまりブランメルは女性に人気はありましたが、けっして浮名は流さなかった人物ということなのでしょうか。
生涯独身を貫き、女性よりも「友情・ファッション・社交」を重んじたのが、ブランメルのダンディズム。
まとめ
それでも、宝塚に「恋愛沙汰」は避けられません。(笑)
あーさブランメル(朝美絢)とあやちゃんハリエット(夢白あや)の若かりし日々の恋愛から、社交界で再会して以降のプリンスを巻き込んでの愛憎劇、そこにフランク・ワイルドホーン氏のメロディーが乗っかるなんて、、、
楽しみでしかない!
そしてなおちゃんプリンス(瀬央ゆりあ)、
妻が音彩唯ちゃん、愛人が夢白あやちゃん、両手に花。(笑)
でも妻とは不仲、愛人とは親友が絡んでの愛憎、、、か。
あと、誰が演じるのか気になっていた、ブランメルを生涯支え続けたと言われる友人アルヴァンレー卿は蒼波黎也くんでしたね。
歴史上はブランメルと直接の深い関わりがなかったとされる名門貴族の青年をあがちん(縣千)が演じることを考えると、こちらのアルヴァンレーは物語の軸としてはあまり関係していないのかな。
どんなエピソードが描かれるのか、今からとっても楽しみです!